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興味あるシグネチャー800のセッティング |
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『スピーカーはS-800ですが、
インシュレーターの取り付けはやって頂く事が出来るのでしょうか?』。
と言う、お電話を頂戴したのですが、型番が私にはピンと来ません。
はて?・・・、最初はJ.B.Lかなと思いました。
「すみません、その番号がどんなスピーカーかよく分らないのですが・・・」。
『B&Wのシグネチャー800です』。
「はい、はい、800シリーズなら何度も調整した事がありますからよく分ります」。
そんな1本の電話から始まったこの度のお話しです。
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『基本的に、土日ならいつでもいいのですが・・・』。
『出来る事なら、P-0sの専用インシュレーターも同時に試聴出来ると嬉しいのですが・・・』。
「かしこまりました、私も、ひと段落しましたので、今週でしたら何とかなりそうです」。
「チョットお待ちになってください、いきなりになりますが、明後日の日曜日は如何でしょう?」。
こうして、スケジュールもトントン拍子で決まり、クリニックの道具を一式持ってM.Aさん宅へ訪問です。
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苦労に報われん為に全エネルギーを提供 |
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とにかく重たいスピーカーですから、二人で動かすには厳しいものがあります。ですから、息子も連れ立ってお伺いさせていただきました。案内されたのは船のような長細い洋館建ての地下室オーディオ専用ルームです。機材関係は総額で裕に2,000万は超えているでしょう。
にもかかわらず、満足した音で音楽が楽しめず、悶々とした日々に苦労をしていると仰る。その前には、ゴトーユニットで大掛かりなマルチも組んでおられたそうです。何をやっても、どこを触っても音が変わるので、最後には何が何だか分らず、機器に振り回されっぱなしだったと本音を打ち明けられたのです。
『それで、今回のシステムで最後にしようと心に決め、
取り組んではいるが、やはり良い音では鳴ってくれない・・・』。
何十年とやって来て、こうした感想を述べられるのですから、
その言葉を重く受け止める必要が私達売り手の側にはあります。
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安心と感動の音を常に創造します |
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いつもの力強い言葉でお客さんを勇気付けます。
「大丈夫ですよ!、この部屋、この機材、何をとっても申し分ありません」。
『思い切って造ったこのオーディオ専用ルーム、
もしも、この部屋その物が良くないといわれたらどうしよう・・・』
と思って内心びくびくしていたそうです。
偶然であったとしても、縦横比、そして高さ面で特に素晴らしいバランスです。
「何はともあれ、いつも聴いておられる状態で一度音をお聴かせいただけますか?」。
・・・・・2〜3分聴かせて頂いて、
「よ〜く分りました」。
「とにかく、1円もお金を掛けないで”カイザー流”セッティングのノウハウだけで、
200万円分に匹敵するだけの音を、これからお出ししますので見ていて下さい」。
「酷な言い方かもしれないですけど、現時点では20点の音しか鳴っていないと思います」。
「何故、20点かと言いますと、残りの80点はこれから出す自信があるから言える事なのです」。
自信がなければ、最初から高い点数を付けておいたほうが後が楽なはずです。
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ことごとく噛み合わない今日の息子と私 |
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私以上のセッティング能力を持っている息子に耳打ちしながら、
「何からやろうか?、スピーカーの位置決めを一番にやるか?・・・」。
『いいや!、ルームチューニング材の調整を真っ先にやらないと、
何が何だか正しい判断が出来ないし、訳が分らなくなる!』。
ガンとした口調で、彼は言い切る!。
なるほど、言われてみればその通り、
最近は、こうして1本取られる事が多くなったのです。
そこで彼が目をつけたのが、8枚あるQ.R.Dです。
・ 正面に2枚、後ろに4枚、側面に2枚。
元は正面に4枚付けていたらしく、取付金具が残っています。
その外した両端の2枚を側面に今使っている状態。
・ これを正面に4枚、後ろに3枚、右側面だけ1枚、
左側はソファーがある関係で無くてもよく、
その代わり、それぞれ方向性を揃えなくては効果が強いだけに怖い。
私が見る限りは、正面の中側の2枚は下に向いているので、
「上に向けようか?」と言うと、
『いいや、そのままの下向きの状態で構わない』と言うのである。
いつもお互いがやっている事と違うので、私には理解不能状態・・・。
『両脇の2枚だけは上に向けないと駄目だけど・・・』。
それと、「後ろの3枚に限っては全部下向きなので直そうか?」と言うと、
それも、『そのままで良い』と言う。
しかし、『真ん中の1枚を正しい向きに最後に変えた時には、
ビックリするから楽しみにしていて欲しい』というのです。
そして、『全ては、最後の最後に分るから、黙って見ておいてくれ』とその考えを崩さないのです。
ほんの小手調べとして、Q.R.Dの方向を調整した音を聴くと、鳴り方が違ってまるで別世界なのです。
『今日のシステムは今までの物とは訳が違う、
全てをセオリー通りにやるとほんの1ミリ狂っても音が崩れるので、
ある程度スイートスポットを甘くしておかないと、
我々が帰った後困るのはお客さんだから』というのが彼の読みだったのです。
『それ位ポテンシャルが高いから、
今までとは全く違ったセッティングにする必要がある』と説くのです。
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音が出る前から頭の中で既に音は出来上がっていると言う |
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お伺いした時にはある程度定番的な考え方になっている、
スピーカーを両側から45度の角度で早めにぶつける方式を採用しておられたのです。
『この部屋では、4つのパターンが考えられるが、
その内の一つはパワーアンプとスピーカーの位置をそっくり入れ替える方法なので、
今回はチョット無理として、その他の3つについてはこれから実際に音を出して聞いてもらいますから、
それから考えましょう』と言う説得力のある話になったので私も一安心です。
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お客さんも納得の説明と合致した音 |
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その初めの一つ目のセッティングとは、部屋の中央部にまでせり出そうかというぐらい思い切って前に持って来たのです。それも、かなり幅が狭く、おまけにスピーカーはリスナーに向かって正対です。しかし、出た音は一気に部屋中に音楽が充満し先ほどまでのスピーカーの奥にちまちまと鳴っていた音とはまるで正反対です。
これには、M.Aさんも驚きの声を上げました。彼の考えは、今まで鳴っていた音の一番の弱点のところを分って貰う為に、正反対の魅力の音を極端であっても提示したものと考えます。それは「引っ込み思案な音」と「アグレッシブな音」とでも言いましょうか。
息子曰く、『いくら音が良いといえども、
これではスピーカーが迫ってくるようで、
圧迫感もあり、落ち着いて音楽を聴く雰囲気にはなれませんよね』。
『でも、スピーカーのポジショニング次第で、
こんな音も出るんですよ』言いながら、
もう次のセッティングに入っているのです。
『これは如何でしょう?』。
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出した音の結果がお客さんの心を開く |
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カイザーゲージで言うと0.3カイザー(31.5cm)ほど後ろに下げたポイントです。音は先ほどの衝撃的なものではありませんが、大変よくまとまっていて視覚的にも大変落ち着いています。さらに、両外に0.15カイザーずつほど広げてほぼ決まりとなりました。でも、M.Aさんは音に関して言えば、どうも初めの音がインパクトが強くて忘れられないらしい。
それはそうでしょう、無意識のうちに渇望していた音が、一気に目の前に現れたのですから分からないでもありません。この時点で、M.Aさんは息子のセッティングに対して完全に信頼をおくようになったみたいです。音とは正直なもので、素晴らしい音楽が鳴り響くようになると、言葉は要らなくなるのです。
『如何でしょうか?、どのパターンの音がお気に召しましたでしょうか?』。
『いいや!、君が良いと思う音に合わせてくれれば結構ですから、全てはお任せします』。
お客さんをして、こうまで言わせるまでの説得力が音にはあるのです。
いつも私が口を酸っぱくして言っておりますように、全ては結果です!。
結果が良くなければ何の意味も持ちません。
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息子に圧倒された今日の私は0点 |
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「次に、そろそろスピーカーのインシュレーターを取り付けるか?」。
『いいや!、P-0sの脚の方が先でしょう』。
『その方が正しい判断が出来る』と言い切るのです。
もう、私の出る幕など全く無しです。
私の言う事全てに反対するように、今日は食い違いが出るのです。それ位、息子の集中力に対して今日の私は圧倒されているのです。それもそうでしょう、今日のセッティングについては彼に全部任せようと思っているのですから・・・。
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そのRK-P0を取り付けた後の音は圧巻でした。 |
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200万近いトランスポート、120万のクロックジェネレーター、そして、これまたウン百万のコンバーター、〆て入り口だけで500万は下らないであろう物が初めて本領発揮し始めたのです。スピーカーの鳴り方がまるで先ほどとは別物に変身しております。しかし、冷静に考えてみればこれが当たり前の音なんでしょう。こうしてみると、P-0sはローゼンクランツのRK-P0無しでは本来持っている筈の能力の半分も出ていないようです。
「ここらあたりで、やっと60点ぐらいまで来たでしょうかねェ」。
試聴機を装着してのテストでしたが、その絶大な効果にM.Aさんは即購入したいから準備して来ておられるのであれば、早速新品に付け替えて欲しいと仰る。もちろんすぐに付け替えは出来るのですが、「試聴した物より現行の物は20%以上音がさらに良くなっていますから楽しみですよ」。
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驚異的なセッティングスピードの加速度組み立て |
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一体どこまで進化するのか?、今日のシグネチャー800。
もう一気に、スピーカーのインシュレーターも履かせてみましょう。
今日は折角息子を連れて来ているのですから、どうせなら彼の特技をご覧に入れながら、最大の効果を発揮すべく、8個あるインシュレーターRK-BWとPB-BIGのオスと24個のネジの相性がベストになるように、加速度組み立てなるものを施した上で完成させたいと思います。
今までは、一つ一つの音の効果を分って貰う為に、処置を施しては聴いて貰いの繰り返しでしたから、納得して頂くまでじっくりと説明も必要でしたけど、そうと決まったらやる事は決まっているので速いものです。
スピーカーを3人がかりで慎重に、そっと横に寝かせるやいなや、速い、速い、あっという間にペアリングを成し、次から次に私に手渡し、絶妙のコンビで組み上げて行きました。元にあった場所にスピーカーを起し、少しスピーカーを浮かしてはBIGを挿入するといった手順でセッティング完了です。
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結線のノウハウ |
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その後、ドミナスのバイワイヤリング用スピーカーケーブルの結線ですが、どちらの物を低域に、あるいは高域側に繋いだら良いのかについては何の指示もありませんが、その判断についても「カイザー独自の方法」で瞬時に判断がつくのです。この音の差もとても大きな違いとなって現れる事を知っておいて欲しいのです。
ちなみに私達二人は、無印のケーブルを10本に裁断した物でも、どの順番につながっていた物か序列の判別が出来るのです。この事は今初めて公にするのですが、まだ3年先位にならないとこの技術は認められないでしょう。
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人間離れした耳 |
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床に傷がつかない為にという理由だけでスピーカーの下に敷いていたカーペットを取り除くと、視覚的にもスッキリして早くも凄い音がしそうな予感を匂わせています。ベルリオーズの幻想交響曲をかけながら重たいスピーカーの微調整をやっておりますが、寸分の無駄も無く3回ほど動かしただけでピンポイントにはめ込んでしまったのです。これはハッキリ言って人間の出来る事ではありません。
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エボニー製フェーズプラグで画竜点睛 |
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私にとって本日のメインイベントは、シグネチャー800にエボニー製フェーズプラグ(RK-PP)を装着して音楽を聴く事です。量産モデルを外に持って出て、それもこれだけ高性能なシステムで聴ける事は又とない絶好のチャンスです。
これは本当に凄いですよ!、信じられないでしょうが、一気に能率が5デシベル位上がったように、B&Wがウエスタンやシーメンスのオイロダインのように軽やかに鳴り始めるんです。とにかく反応がメチャクチャ速くなります。
一言で言うとなると、どういった表現が一番相応しいのでしょう。
オーディオが黒子に変わる瞬間とでも言いましょうか、
とにかく音楽を聴いていたい、
「味気無いオーディオの話なんかこの場でするなよ!」。
私流にはそんな気分なのです。
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奏でられる音楽は天使の如く純粋 |
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正に信じられない事が目の前で起こっているのです。昼にお邪魔した時の音はどこかよその家の話のようです。どちらかが真実で、どちらかが夢の如く、まるで空中を彷徨っているような不思議な錯覚を同じ部屋の中で体験しているみたいです。
特に変わりようが大きいのは、重低音から中低音にかけてのキメ細やかな音階が正確に聞き取れるのです。したがって、チューバ、コントラバス、バスクラリネット、大太鼓とそれは見事に描き別けられて耳に入ってきます。全く脳が覚醒されたかのようにです。
当然それとの関連で、今まで薄い感じだった中音域が緩やかなアーチ状のカーブとなって、ボーカリストの声が肉厚感を増し、リアリズムをもたらしてくれるのです。さらに高音域においても、それらに導かれるようにナチュラルな広がり感を携えて、部屋一杯にお花畑のような香りが誕生します。
空気中を漂って、こちらに音がたなびいて来るような鳴り方のホルンの音やオーボエの音は耳に心地良いものです。また、こうなったら、次々と色々なディスクをかけて聴きたくなるのが人情ですが、アーロン・ネビルの甘くとろけるような声もリアルなら、128倍サンプリングで有名なチェスキーレーベルのレベッカ・ピジョンの透き通った歌声も何十回となく聴いた中でも初めての清々しさです。
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ドボルザークの新世界、これを聞いて一気に音楽の虜になった仰る。そう言いながら、今度はビートルズのGet
Backをかける、モノラル版だけど、生々しく思わず身体がうきうきして来るのには驚きです。如何に音楽しているかの証明でしょう、今に知った事ではないのでしょうけど、恐ろしやビートルズです。こうしたロックをかけても素晴らしく、まるでラジオから音楽が流れて来ているかのように自然なんです。もうこの時点でオーディオの事なんかすっかり忘れてしまって音楽に聴き入っているM.Aさん。
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方向性が変わっているから確認してみて |
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息子が私にそっと耳打ちするのです、
『Q.R.Dの方向性が変わっているから確認してみて』と言うのです。
「どれ?、どれ?、うそ〜・・・?!」。
先ほど下向きだった物が、全て理想の上向きに変化しているのです。
「どうして?・・・」。
『理由を言っても誰も信じないから言わないけど、
現実に変わっているのは分るでしょう』と言う。
「最後になれば分るからと言ったのはこの事だったのか?」。
『そうだよ!・・・、ふふふふ・・・』。
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